インプラント治療に関連した骨造成

骨量の不足のためにそのままではインプラント治療ができない患者様はたくさんおられます。重度の歯周病の罹患を理由に歯を喪失したり、適合の悪い可撤性義歯を長期使用することによって歯槽骨や顎骨が吸収されるためです。骨量が不足した場合、インプラント埋入手術の前、もしくは同時に骨造成(骨を造る)することでインプラント治療が可能になります。

骨造成方法は多岐にわたりますが、代表的なものとして上顎洞底挙上術(サイナスリフト)、骨再生誘導法(Guided Bone Regeneration: GBR)、ブロック骨移植などがあります。

上顎洞底挙上術(側方開窓術)

 上顎の奥歯(臼歯部)では、副鼻腔のひとつである上顎洞という空洞が存在するため、インプラント埋入に際し解剖学的制限を受けます。そのため、上顎洞底を拳上し、 骨造成することでインプラントの埋入スペースを確保する「上顎洞底拳上術」が多用されています。 上顎洞底挙上術は主に歯槽頂アプローチと側方アプローチに大別されます。側方開窓術は洞粘膜を直視下で広範囲に挙上できるため、大きな骨造成が必要なときに有用です。

      Ueno et al. Clin Adv Periodontics. 2014;4:43-­48
青線部に相当する断面(CT画像)が図cです。インプラントを植立する際に骨の高さが足りません。
上顎洞
骨の高さ
​①上顎洞側壁を骨削    ②上顎洞粘膜の剥離      ③上顎洞粘膜の挙上      ④骨移植材の填入
上顎洞
Ueno et al. Clin Adv Periodontics. 2014;4:43-­48
上顎洞側に上顎洞粘膜を挙上し骨造成することによりインプラントの植立が可能になります(左上図)。通常は6ケ月程度待ってから被せ物を装着します(右上図)。
側方開窓術の利点
上顎臼歯部において骨量が少なくたくさんの骨造成が必要な場合に有用です。
側方開窓術の欠点
比較的高率で洞粘膜の穿孔をきたします(近年報告されたレビュー論文※では平均8.6%)。穿孔が小さければ修復し通常通りの骨造成ができます。稀ではありますが大きい場合は再手術になる可能性もあります。
※Schwarz et al. J Oral Maxillofac Surg.2015Jul;73(7):1275-82

骨再生誘導法(GBR)

骨再生誘導法は骨幅や骨の高さを獲得するために用いられる方法です。一般的には欠損部に骨補填材を填入した後に、遮断膜で覆います。遮断膜の使用は骨欠損部への繊維組織の侵入を遮断し、骨髄腔の細胞を欠損部に侵入分化させ、骨形成が可能な環境を作ることを目的とします(図6)。

インプラント埋入同時GBR法
左上図は骨幅が狭いためにインプラントの植立時にインプラント体が骨から露出した状態です。露出した部位の周囲に骨造成を行います(中上図)。通常4〜6ケ月後に被せ物をいれる処置に移ります(左上図)。
利点:賦形性が高く任意の形態に骨を作りやすい。国内、海外において最も普及している骨造成法の一つです。
欠点:術後に遮断膜が粘膜から露出することがあり、その際は骨形成の阻害が認められることがあります。
 

自家ブロック骨移植

オンレーグラフトは既存骨の外側に採取したブロック骨をスクリューで固定する方法です(図7)。移植した骨が既存骨と一体化した後にインプラント体を植立します。 一般的には移植した骨が定着するまで約6か月かかるといわれています。

左上図のように骨量が不足した際に、口腔内(下顎枝前縁、下顎骨体部など)から骨を採取して

(中上図)、チタン製スクリュー等で欠損部に移植・固定します(右上図)。

利点:自家骨移植のため、欠損部に質の良い骨が再生されます。

欠点:ドナーサイト(採取部位)が必要になるため、症例によっては切開が二ヶ所以上になり、術後の腫れが大きくなる傾向にあります。

リッジエキスパンション

リッジエキスパンジョン(スプリットクレスト)は骨の厚みが薄い時に行う手術です。骨に切り込みを入れた後(左下図)にノミで骨幅を広げ(中下図)、インプラントを植立します(右下図)。当院では骨切時に、周囲粘膜を損傷しにくく切削ブレをおこしにくい、超音波切削器具を併用しています。

①       ②       ③       ④      ⑤      ⑥

①インプラントを植立のに十分な骨幅がない。②細いドリルでインプラントの植立窩を形成した後に、③超音波切削器具を用いて骨切りする。④マイセル・マレットを用いて骨幅を広げていく。⑤インプラント体を植立後に骨幅が広がっていることがわかる。⑥通常は拡張部にできた欠損に骨造成してから閉創する。

利点:インプラント体の周囲を自家骨で被覆できるため、より良い骨再生と骨結合が得られる。

欠点:骨幅を広げる際に完全骨折しないように、骨切りの深度・方向やマレッティングに熟練を要する。

 

上記手術法を単独使用もしくは併用することによって、骨量が不足した難症例においてもインプラント治療が可能となります。